「工務店は儲からない」と言われることは多いですが、これは半分は事実で、半分は誤解です。
正確に言えば、工務店は 利益が出にくい構造を持ちやすい業態であり、その構造を理解せずに経営すると「忙しいのにお金が残らない」状態に陥りやすい、というのが実態です。
一方で、同じ工務店でも 安定して利益を出している会社が存在するのも事実です。
差を生むのは「腕」や「真面目さ」よりも、数字の設計と仕組みの有無です。
ここでは、
- なぜ工務店は「儲からない」と言われやすいのか
- 実際の利益率はどの程度なのか
- 儲かる工務店と儲からない工務店の分かれ目はどこか
を誤解が出にくい形で整理します。
なぜ工務店は「儲からない」と言われやすいのか
粗利が守りにくい(価格決定が弱くなりやすい)
工務店の収益構造は非常にシンプルです。
- 売上(工事請負額)
- − 原価(材料費・外注費・現場経費など)
= 粗利 - − 固定費(人件費・事務費・広告費など)
= 利益
問題は、この「粗利」を確保しにくい構造にあります。
住宅・リフォームは見積比較になりやすく、
- 価格で負けたくない
- 相見積もりが前提
- 値引き要請が頻発
という状況から、必要な粗利を乗せきれないまま受注してしまうケースが多くなります。
結果として、
仕事はある
現場も忙しい
でも利益が残らない
という状態が生まれます。
個別生産ゆえ、原価がブレやすい
工務店の仕事は、基本的に 一品生産です。
- 建物条件が毎回違う
- 既存建物を壊してから問題が見つかる
- 施主の要望変更
- 天候や近隣条件
- 協力業者の空き状況
これらにより、当初見積と実際の原価がズレやすい。
特に問題になるのが、
- 追加変更のルールが曖昧
- 原価管理がどんぶり
- 想定外対応を「サービス」で処理
といったケースです。
このズレは、ほぼそのまま工務店の利益を削ります。
工期の遅れがそのまま利益減になる
工務店では、時間=コストです。
- 工期が延びる
- 現場監督の拘束時間が増える
- 次の現場に入れない
- 職人の待ちや手戻りが出る
これらはすべて 利益を直接削る要因になります。
「良い仕事をしているのに儲からない」工務店ほど、段取り・工程管理が属人化しているケースが多く見られます。
資金繰りが先行する構造
工務店は、
- 材料代・外注費を先に支払う
- 入金は出来高や引渡し後
という 支払い先行型ビジネスです。
そのため、
- 売上が伸びるほど運転資金が必要
- 粗利が薄いと資金繰りが一気に苦しくなる
という状況が起こりやすく、黒字でも資金ショートするリスクを常に抱えています。
実際、工務店の利益率はどのくらいなのか
ここは誤解が生まれやすいので、慎重に整理します。
粗利率(売上総利益率)について
建設業全体の統計では、
- 平均的な粗利率はおおむね25%前後
とされるケースが多く見られます。
ただし注意点として、
- 業種(住宅・設備・土木など)
- 会社規模
- 元請・下請の比率
によって差が大きく、工務店(住宅中心)だけを切り出した平均値は把握しにくいのが実情です。
実務感覚としては、
- 原価管理が弱いと 15〜20%台
- 仕組み化された工務店で 25%前後
- 高付加価値型で 30%近く
といった幅で考えるのが現実的です。
営業利益率について
営業利益率は、より厳しい数字になります。
実務・調査ベースでは、
- 0〜2%程度がボリュームゾーン
- 数%出ていれば優良
- 5%超はかなり高収益な部類
というのが実態に近い見方です。
つまり、
「5〜10%が普通」
という世界ではありません。
5%を安定して出せている工務店は、商品設計・契約運用・工程管理・集客のすべてが整っている例外的存在と考えるのが適切です。
儲からない工務店が陥りやすい典型パターン
- 見積が粗く、原価の抜け漏れが多い
- 追加変更が口約束になっている
- 工期が読めず、現場が長引く
- 管理会計がなく、案件別利益が見えない
- 安さで受注してしまう
- 集客が広告依存で固定費が重い
この状態で「もっと仕事を取ろう」と動くと、忙しさだけが増え、利益はさらに薄くなるという悪循環に入ります。
それでも儲かる工務店が存在する理由
儲かる工務店は、特別な魔法を使っているわけではありません。
共通しているのは、
- 標準仕様・標準納まりが整理されている
- 原価と粗利を把握した値付けをしている
- 変更追加のルールが明確
- 工程管理が仕組み化されている
- OB・紹介が回り、集客コストが低い
つまり、「感覚経営」から「設計された経営」に移行しているかどうかです。
工務店は「儲からない業態」ではないが、「設計しないと儲からない業態」
まとめると、
- 工務店は
利益が出にくい構造を持ちやすい - しかしそれは
業態の宿命ではなく、設計の問題 - 数字・契約・工程・集客を整えれば
十分に利益を出すことは可能
「工務店は儲からない」という言葉は、“仕組みを作らずに走ると儲からない”と読み替えるのが、最も実態に近い表現だと言えるでしょう。
以上、工務店は儲からないのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
