「工務店の廃業率」を単独で示す公式統計は存在しないです。
「工務店の廃業率は何%か」という問いに対し、結論から言うと、工務店だけを対象にした公式な廃業率は、日本では一意に公表されていません。
これはデータが不足しているからではなく、「工務店」という言葉が統計上の業種区分ではないためです。
なぜ工務店の廃業率は“数字で出にくい”のか
工務店は業種名ではなく「業態」
公的統計では、建設業は次のように分類されます。
- 総合工事業
- 職別工事業(大工工事、とび工事など)
- 設備工事業
一方で「工務店」は、住宅やリフォームを中心に請け負う小規模建設事業者の総称であり、上記の複数区分にまたがって存在します。
つまり、工務店=統計上の単一カテゴリではないため、「工務店の廃業率」という数字をそのまま算出できないのです。
個人事業主が多く、母数が揃わない
工務店には、
- 法人
- 個人事業主
の両方が多く含まれます。
統計によっては「法人のみ」「個人事業主を含む」など母数が異なり、同じ“廃業”でも率が変わってしまうという問題があります。
「廃業」には複数の意味がある
一般に混同されがちですが、以下は別物です。
- 倒産:資金繰り悪化などにより法的整理に至るケース
- 休廃業・解散:倒産ではないが、事業をやめる・法人を解散するケース
- 統計上の廃業率:雇用保険など事業所ベースで計算されるマクロ指標
工務店の実態を語る際、どの「廃業」を指すのかを明確にしないと誤解が生じます。
実務で使われる「工務店の廃業率に近い」3つの指標
工務店単独の廃業率がないため、実務では次の代替指標が使われます。
建設業の「倒産件数」(深刻な退出)
信用調査会社である 帝国データバンク の調査によると、
- 2024年の建設業倒産は1,890件
- 過去10年で最多水準
業種内訳では、職別工事業(大工工事、とび工事など)が最多で、工務店と性格の近い事業者が多く含まれます。
また、倒産企業の 9割以上が従業員10人未満であり、典型的な工務店の規模感と重なります。
「休廃業・解散」(倒産に至らない退出)
倒産だけを見ると、実態よりも小さく見積もられがちです。
そこで重要なのが「休廃業・解散」です。
帝国データバンクの調査では、
- 2025年1〜8月の休廃業・解散は約4万7,000件
- 前年同期比で増加傾向
この中には、
- 後継者不在
- 体力があるうちに撤退
- 受注減少による事業整理
といった、工務店に多い“静かな退出”が含まれます。
中小企業白書の「廃業率」(マクロ指標)
中小企業白書では、
- 2023年度の廃業率:3.9%
- 開業率も3.9%で拮抗
とされています。
ただしこれは、
- 全産業平均
- 事業所ベース
の指標であり、工務店や建設業に限定した数字ではありません。
あくまで「日本全体の事業退出の水準感」を把握するための参考値です。
統計から見える「工務店が廃業しやすい構造」
これらの統計を総合すると、工務店にとって不利になりやすい要因が浮かび上がります。
資材価格の高止まり
木材・建材・住設価格は高水準で推移しており、見積時点で想定した利益が削られやすい構造があります。
人手不足と外注費上昇
職人不足により、
- 外注単価の上昇
- 工期遅延
- 同時施工の制限
が起こり、小規模工務店ほど影響を受けやすい状況です。
小規模ゆえの資金繰り耐性の弱さ
工務店は、
- 材料費・外注費の立替
- 入金までのタイムラグ
を抱えやすく、黒字でも資金が回らず撤退するケースが少なくありません。
「工務店の廃業率」を語るときの正しい言い方
誤解を避けるため、表現は次のように整理するのが適切です。
不正確
工務店の廃業率は○%である
正確
工務店単独の公式な廃業率は存在しないが、
工務店を多く含む建設業では倒産・休廃業(事業退出)が増加傾向にある。
特に小規模事業者の退出が目立つ。
この表現であれば、統計の守備範囲から外れず、かつ実態も正確に伝えられます。
まとめ
- 工務店単独の廃業率は公式には存在しない
- 代替指標として
- 建設業の倒産件数
- 休廃業・解散件数
- 中小企業白書の廃業率
を組み合わせて見るのが実務的
- 統計上も、小規模・職別工事系の退出が増加しており、工務店の経営環境は厳しい
以上、工務店の廃業率についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
